安ければ、安いなりのリスク

突発的な運休、簡素な設備やサービス、死亡事故の危険性など、一般的に安ければ安いなりのリスクが伴うわけですが、それを理解していないのかな。

<格安航空>不便も同乗…芋づる欠航招く 少数機、短い間隔
毎日新聞 7月22日(日)21時33分配信

7月3日に国内線に就航したジェットスター・ジャパンのエアバスA320型機(右)と8月1日に就航するエアアジア・ジャパンのA320(左)=成田空港で2012年7月14日、早川健人撮影
 来月1日に全日本空輸子会社の格安航空会社(LCC)、エアアジア・ジャパンが就航し、夏の行楽シーズンに日系3社がそろい踏みする。関西国際空港を拠点に3月に就航した同じ全日空系、ピーチ・アビエーションの搭乗率は5月末の集計で平均77%となり比較的快調な滑り出しだが、今月就航したジェットスター・ジャパンが就航初日から欠航を出すなど「格安」と引き換えにした「不便さ」も見えてきた。海外で普及が進んだLCCは日本に定着し、空の価格破壊をもたらすのか。現状を探った。【宇田川恵、桐野耕一】

【空の旅、本当に大丈夫?】LCC登場、コスト削減合戦、パイロットの年齢制限を緩和

 今月3日の就航初日に欠航便を出す事態になったジェットスター。同社によると、原因は最終便に使う航空機で、搭乗手続きなどの遅れが少しずつ重なったことだった。

 欠航したのは新千歳発成田行き最終便で、午後8時40分に新千歳を出発予定だった。

 航空機は同日午後1時27分、まず成田から福岡に定刻より17分遅れで出発。しかし、折り返して福岡を出発する便の遅れは40分に拡大した。成田に戻って新千歳に向かう便では、空港混雑による離陸待ちも加わり、午後6時半の出発予定が午後7時56分と1時間半近い遅れになった。新千歳に着いたのは定刻より1時間22分遅れの午後9時32分で、機内清掃などをすませて折り返しても、成田の飛行禁止時間となる午後11時までに到着できなくなったため、欠航を決めた。

 同社は、チェックインをすませた乗客の搭乗確認や、機体への給油作業などに予想以上の時間がかかったためと話し、「業務の基本動作に大きなミスがあったわけではない」と説明する。

 しかし、LCCならではの弱点があったことは否めない。

 ジェットスターでは、航空機が空港に到着してから出発するまでの運航間隔が約30分で、日本航空などの大手より15分ほど短い。この短時間に機内清掃から機体の給油・点検、乗客の荷物搬入や搭乗確認までスピーディーにこなす必要がある。一つ作業が滞ると、芋づる式に遅れが広がりやすいのだ。

 多くの航空機を保有する大手航空会社では、前の便の到着が大幅に遅れる場合、別の機体を手配して欠航を防いでいる。しかし、LCCは少ない航空機を使い回してコストを切り下げているため、急な機体手配は難しい。

 3機の保有で1日12便を運航するジェットスターの広報担当者は「就航初日は社員の緊張や不慣れで、乗客の乗り降りをはじめ作業全般が遅れた」と釈明するが、12日も燃料ポンプに不具合の表示が出て発着が遅れ、新千歳発成田行きの最終便が欠航した。同社は23日から一部ダイヤを20分繰り上げるが、就航初日の最終便に搭乗予定だった東京都の男性は「もうジェットスターの最終便には乗りたくない」と不信を口にする。

 先陣を切ったピーチも軽微なトラブルによる欠航が続いた。3月28日に長崎空港で、客室乗務員が誤って脱出用シュートを作動させ、新品に交換する整備が必要になって運航を中止したのが一例だ。同社は部品の保管を最小限に削っているため、新しいシュートの取り寄せに時間がかかり、発生から3日間で計13便が飛ばなかった。

 同社の広報担当は「1機に不具合が出れば複数の便が欠航するのはLCCの宿命」と利用者の理解を求めている。

 航空行政に詳しい早稲田大アジア研究機構の戸崎肇教授(公共経済学)は「2社のトラブルとも典型的なLCCの問題が出た。利用者はそういった特徴に留意してLCCを利用する必要がある」と指摘している。

 ◇成長へ課題…発着枠・コスト

 LCCは世界の空ですでに3割のシェアを握っている。日本ではなぜ出遅れたのか。

 LCCは約30年前、米国で誕生した。きっかけは1970年代後半に加速した航空自由化だ。78年に航空会社規制緩和法が制定されたことで、航空会社が運賃を自由に設定できるようになり、格安競争が激化。元々国土が広く航空需要が大きいため急速に普及した。その後欧州やアジアにも拡大、マイカーや長距離バスの利用で航空機に乗ったことがない新たな顧客を掘り起こした。

 一方、日本でLCCが注目されるようになったのはここ数年だ。日本に初めて乗り入れたのは、07年3月に関西-シドニー線を開設した豪州ジェットスター航空。8月のエアアジア・ジャパン就航で日本に乗り入れるLCCは計13社となるが、シェアはまだ数%に過ぎない。

 出遅れの最大の要因は「空港の発着枠とコスト高」(LCC関係者)だ。成田など首都圏の拠点空港では、LCCが乗り入れを希望しても発着枠に余裕がなかった。航空各社が空港に支払う着陸料も日本の高さが際立っており、成田や関空はシンガポール・チャンギ空港や韓国・仁川空港の約3倍。地上業務の人件費や空港の施設使用料なども高く、エアアジア関係者は「日本では1座席当たりのコストがマレーシアの約3倍」と話す。費用を極限まで削って格安運賃を実現するLCCにとってコスト高は死活問題だった。

 流れが変わったのは09年以降。国土交通省がアジアからの観光需要を重視し、LCCを中心とした航空需要拡大策を打ち出した。同時に相次ぎ規制緩和も実施し、今年6月にはパイロットの乗務条件を緩和してLCCがパイロットを確保しやすい環境を整えた。

 ピーチ・アビエーションが一昨年、発着枠に余裕がある関空を拠点に就航する話を持ちかけたのを機に、利用者の低迷にあえぐ関空が「LCCで起死回生を図ろう」と誘致を活発化。茨城など赤字に苦しむ地方空港も追随し、アジアのLCC誘致を活発化させた。

 そうした中、成田の発着枠も拡大。10年10月まで年間22万回だった発着枠は11年度末に25万回となった。14年度末には30万回まで増える。周回以上の遅れだった和製LCCが普及する条件がようやくそろった格好だ。

 だが今後の成長は未知数だ。日本は国土が狭いうえ、新幹線など高速鉄道網が既に十分発達している。コスト高の課題も依然残る。エアアジアのトニー・フェルナンデス最高経営責任者(CEO)は毎日新聞の取材に「空港を低価格で提供してくれないなら別の場所を探す」と述べ、成田と施設使用料などの引き下げ交渉をしていると明らかにした。「成田などの発着枠はまだまだ不十分」(航空大手幹部)との声もある。低コスト化やさらなる規制緩和が今後のカギを握っている。

 ◇格安航空会社(LCC)◇

 英語で「LowCostCarrier(ローコストキャリアー)」の略。機内食を有料にするなどサービスを簡略化したり、航空機を1機種しか持たず整備費を削るなどして徹底的にコストを削減し、低価格の運賃を提供する航空会社。運賃は大手航空の2割~半額程度で設定されている。

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最終更新:7月22日(日)23時30分

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120722-00000043-mai-bus_all

One Reply to “安ければ、安いなりのリスク”

  1. いわゆる『日本人の感覚』だと、質を見極めて選択するのが『普通』でしたが、大量消費時代を経て、『売っているものは安全』という消費者としての根本的な責任を放棄してしまう人が増えていることは否めないように思います。

    そのように仕向けられてきましたし、消費者だけの責任ではないと思いますが。

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