路線バスの存続問題<飯能市の場合>

利用者減少や燃料費の高騰等で、飯能市内で路線バスを運行している国際興業が平成25年3月31日で撤退表明。
→赤字分補助として、20,000,000円交付することで、撤退期限を1年間の延長して、平成26年3月31日に。

同社や市のほうで、路線を引き受ける事業者をさがしたが、
→全路線の引き受けは無理、赤字路線は運行しない。

市で運行するとしても、
→多数の車両と乗務員が必要になる。
→1年間毎日運行となると予備車両・交代(休憩)要員も必要。

市の負担軽減のため黒字路線を民間で運行するとしても、
→それでも10台以上の車両と20数名の乗務員は必要
→黒字路線がないので収支的に悪くなる

デマンドシステムでの運行も検討したがデメリットが多い
→時間帯によっては、通常のバスも必要になる
→悪天候時や観光シーズンは小型車では対応しきれない
→予約に備えて、乗務員は常に確保しなければならない
→乗客が1人の予約でも運行しなければならない
→急用で利用したい場合でも、予約がないと運行されない

飯能市の特徴として、東西に長く集落も道路に沿って形成されている
→循環バスやデマンド運行に適していない

以上が、公式サイト記載の要約です。

ここまで、分析結果を公表しているのは、なかなかないのではと思います。

http://www.city.hanno.saitama.jp/0000003245.html

一応、全文を転載

国際興業(株)飯能営業所の撤退に関する市の対応について(再掲)
撤退申し出までの経緯
(この記事は、平成24年6月28日に掲載したものを再掲したものです。) 

昨年6月に、国際興業(株)から市に対して、飯能営業所の全面撤退を具体的に検討するとの申し出がありました。

 飯能営業所につきましては、長年にわたり市内の公共交通としての役割を果たすべく、経費削減などの企業努力のもと、事業を運営してきましたが、少子高齢化や人口減少による利用者の減少、燃料費の高騰などの要因から非常に厳しい経営環境におかれ、さらに東日本大震災による乗合バス事業の甚大な影響からやむを得ず平成25年3月31日で閉鎖し、管轄する全路線を廃止することを具体的に検討するとのことでした。

 市では、全路線を引き継ぐ事業者の確保と事業者が決まるまでの間、運行を継続していただくことをお願いしました。

 国際興業(株)からは、後継事業者の確保に努めるが、確保するとの確約はできないこと、継続については飯能営業所の赤字額全額の補てんがなければ不可能であるとの回答がありました。

 本市としては、今回の撤退に関する申し出は急なことであり、また、後継事業者を含め今後の公共交通体系を整理するための時間がないことなどから、赤字額全額を補てんすることはできないが、赤字路線に対する補助金として20,000千円を新たに交付することにより継続のお願いをしたところ、撤退期限を1年延長し、平成26年3月31日まで飯能営業所を継続されることとなりました。

市の対応
 市では、12月1日付けで公共交通を担当する職員を2名配置し、次の事項を検討してまいりました。

1、国際興業バスの利用者数の調査。

2、市営バス(コミュニティバスを含む)の運行や小型のデマンドバスの運行など、撤退後の対応についての調査及び研究。

3、国際興業バス路線沿線地区への状況報告

4、地元の乗合バス事業者に国際興業バス路線を引き継ぐことについての交渉。

 また、担当を配置する以前から、国、県への対応策の相談、名栗本線の利用状況調査、近隣市への視察なども行ってきました。

(1)国際興業バスの利用状況について
 市では、国際興業バス路線において、特に経営が厳しい路線について、市職員で乗客数調査を行いました。結果は次のとおりです。

1、原市場・名栗系統(飯01、飯02、飯03、飯01-2、飯02-2、飯03-2、飯06)

  ・11月4日調査

・のぼり:36本 674人、くだり:41本 726人  計1,400人

・2月17日調査

  ・のぼり:36本 644人、くだり:41本 745人  計1,389人

2、中藤・中沢系統(飯04、飯05)

・2月1日調査

・のぼり:11本 106人、くだり:11本 91人   計 197人

3、間野黒指系統

  ・1月13日調査

  ・のぼり:6本 27人、くだり:6本 21人    計  48人

4、市営住宅・新光系統

  ・1月12日調査

  ・のぼり:25本 158人、くだり:24本 137人  計 295人

 また、ゴールデンウィーク初日の4月28日の午前中、名栗地区への利用者数を調査したところ、多い便で50人を超える乗客があり、平均で20数人の利用がありました。

(2)撤退後の対策についての検討
 国際興業バスの撤退後の対策について、次の検討を行いました。

1、 市営(コミュニティバス含む)及び委託運行について 

バスの運行は、1年365日運行します。運行時間も始発便から最終便まで、路線(系統)によっては、十七時間を超えます。

また、通勤、通学時間はどの路線においても利用者数からバスが必要となります。

対応するためには、相当数の車両及び乗務員が必要となります。

車両については、車検や点検、修理などに対応するための予備車両、乗務員については、長時間勤務による交代者や休暇も考えなければなりません。

そのほかに車庫用地、燃料費などの費用が当然必要となります。

バス車両購入費、車庫用地、運行経費(人件費、燃料費など)など、市の費用負担は相当の額になります。

現在の路線を半分にすることや黒字路線は他事業者に任せた場合においても、車両10数台、乗務員20数名が必要である上、黒字路線を失うことで収支的にさらに厳しくなることがわかりました。

2、 デマンドタクシーなどの運行について

ワゴン車によるデマンド運行については、燃料費や車両購入費はある程度抑えられますが、乗務員は必要であり、また、時間帯によっては、バスでないと対応できないことも生じてきます。特に、雨天時や観光シーズンは小型車両では対応できません。

 名栗・原市場の路線は、1日に1,300人程度の利用があり、特に通勤通学時間は、利用が集中することから、デマンド運行やワゴン車などの小型車両では対応できないことがわかりました。

デマンド便は、予約がある時だけ運行するので、効率的な運行ができると考えますが、予約がいつ入るかわからないために車両、乗務員を常に確保しなければならない、1人の予約だけでも運行しなければならない、など非効率な面があります。

 デマンド便やワゴン車の運行は、運行エリアが定められていること、利用対象者も少数であること、集落がまとまっていることなどが運行に適した条件になります。

飯能市の地形は、東西に長く伸び、集落も道路に沿って形成されています。よって、運行距離や回送距離が長くなり、循環バスやデマンド運行に適していません。

また、急用で利用したい場合も予約がないと運行されないため、利用できないということもあります。

 路線バスの場合は、定められた時間であれば、予約なしで誰でも乗車できます。

(3)沿線地区への状況報告
 市では、3月中旬から6日間、国際興業バス路線の運行する6地区に対して、これまでの状況についての報告会を開催しました。

 報告会では、国際興業(株)の概要やこれまでの経緯、市の対応、などを市長から報告しました。また、地区別のバス利用状況の報告も行いました。

 各地区からは、現状路線の維持や代替手段に対する要望、後継事業者の状況についての質問などがありました。

(4)後継事業者について
市では、地域の公共交通を確保すること、赤字経営を余儀なくされる路線と収益が見込める路線とを一緒にすることにより、赤字額を削減することができることなどから、全路線を一括で引き継ぐことなどを後継事業者の条件とし、飯能市での運行事情をよく理解し、後継事業者に承継する場合には承継条件なども説明できる国際興業(株)に、後継事業者の確保をお願いしました。
国際興業(株)からは、後継事業者の確保のため、複数の地元の乗合バス事業者に打診したところ、どの事業者においても、そのような条件で本地域の路線バスを運行することは極めて困難との回答であったとの報告がありました。

 

国際興業(株)からの報告を受け、市でも同じ乗合バス事業者に交渉を行いました。結果は次のとおりです。

  (1)全路線を引き受けることはできない。

  (2)赤字路線を引き継ぐことはしない。

(3)一部路線であれば、検討することは可能。

  (4)名栗地域についての運行は費用が掛かりすぎるためできない。

  (5)国際興業バスと同様の運行はできない。

 引き継ぎを検討する路線とは、収益が見込める路線であり、赤字路線については極めて厳しいとのことでありました。

 また、国や県にも後継事業者について相談したところ、後継の事業者については、一般乗合旅客バス運行の許可事業者であることとし、利用者の利便性を考えた対応をしてほしいなどの助言がありました。

(一般乗合旅客バス運行の許可事業者でないと路線バスは運行できません。)

市の考えについて
 市営や委託運行、デマンド運行などをする場合においても現在のバス路線をそのまま維持するためには、多額の費用が必要となります。

経費を削減するため、減便や一部路線を廃止した場合は、利用者は大変不便になります。

パスモ、スイカも使えません。

観光客の交通手段も考えなければなりません。

これまでの検討結果や後継候補事業者との交渉を通して、国際興業(株)が飯能市において長きにわたり運行していた重要性を再認識し、また、市民の利便性を考慮し、この路線を現状のまま、安全に運行できるのは国際興業バスしかないとの結論から、平成24年3月末に運行の継続を改めてお願いしました。

現在の状況
市で継続のお願いをした時点で、国際興業(株)では、撤退するための準備を進めておりました。

方針転換として全路線の運行を継続する検討を行うには、主な赤字路線の全系統への赤字補助とスクールバス運行業務委託の継続が必要であること等の条件が示され、この条件をもって、飯能営業所について、存続に向けての方針転換ができるか否かを検討するとのことでありました。

市では、これらの条件を踏まえ、平成26年4月1日以降の運行継続を国際興業(株)にお願いしました。

国際興業(株)からは、方針転換をするためには、検討や調整に時間を要するとの連絡を受けているところです。

国際興業バスの運行について
国際興業バスにつきましては、平成26年4月1日以降も飯能市内の運行を継続することの協定書を8月に締結しました。

路線バスを維持するためには地域の方々の利用が大変重要となります。

 市では、今後も路線バスの維持確保に努めてまいりますが、

 「地域が守り、地域が育てる」を合言葉に、路線バスを積極的に利用していただきますようお願いします。

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