msn産経ニュースより
『通学が、通院が…ある日突然バスが来なくなったら 本当にあった路線バス、唐突な店じまい 栃木』
2014.6.22 07:00 (1/2ページ)
いつも使っている路線バスがある日突然運休した。栃木県矢板市と日光市を結ぶ路線バスの運休は高校生らの通学に大きな影響を与えた。関係自治体は対応を協議し、同じ路線の認可を持つ別のバス会社に運行を要請して協力を取り付け、事態は解消した。だが、今後も運行を継続するためには自治体側の負担も必要となる。(宇都宮支局 伊沢利幸)
●運行すればするほど赤字
バスを運行していたのは矢板市に本社を置くタクシー会社。平成14年に認可を受け、路線バスの運行に参入した。ルートは、JR矢板駅(矢板市扇町)から塩谷町を経由して東武鬼怒川線新高徳駅(日光市高徳)までの約26キロ。矢板市内の高校に通学する生徒ら約50人が利用していた。
前日まで運行していたバスが停留所に掲示された「運休」の張り紙一枚で運行を休止したのは5月21日だった。
道路運輸法では事業廃止は半年前の届け出が必要だが、同社は運休前日の20日に国土交通省関東運輸局栃木陸運支局に届け出た。
同社社長は、父親の前社長が4月に亡くなり、経営を引き継いだ。社長は「親父がこれまでボランティアで運行してきたようなもの。運行すればするほど赤字で、バスの燃料代や運転手の給料も出ない。法律は知っているが、どうにもならなかった」と説明する。
特に塩谷町と矢板市を結ぶルートは生活路線だが、利用者は少ない。栃木県内で多くのバス路線を運行する東武鉄道や東野(とうや)交通(宇都宮市)も運行していたこともあったが、撤退している。
矢板のタクシー会社は規制緩和で免許制から許可制になったことを受け、塩谷町のバス会社とともに新規参入した経緯がある。
『通学が、通院が…ある日突然バスが来なくなったら 本当にあった路線バス、唐突な店じまい 栃木』
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関係者によると、行政側は沿線住民にとって唯一の公共交通機関でもあり、路線を維持し安定して運行させる必要があるため補助金申請の条件を満たそうと共同運行や協定運行などの案を示したが、受け入れられなかったという。
また、他社路線に合わせて生徒らの定期券の割引率を10キロまで4割、10キロ以上は8割と設定したことも経営を圧迫したとみられる。結局、この路線で運行を続けていたのは新規参入した2社のうち矢板のタクシー会社だけ(1社は運休)。利用者の大半は通学の高校生であり、行政の支援がないままでは、赤字が膨らむだけだった。
●再開したが運行は7月7日までの暫定
5月21日のバス路線運休後、6月に入ってようやく運行が再開した。2~5日の4日間は日光市と塩谷町がバスを借り上げ臨時運行。路線の営業認可を持っていた塩谷町のバス会社が運行を再開したのは今月6日と、運休から2週間以上を要した。その間、大半の生徒は保護者らの送迎で登校したが、保護者が対応できず登校できない生徒もいたという。
再開された路線だが、運行は7月7日までの暫定。定期券は発行されず、同区間の料金は通常の半額の500円に設定された。
このバス会社の社長は「行政から支援がなければ、運行を維持するのは不可能。(手続き的には)すぐに延長もできるが、行政側の支援策をみてから運行を続けるかどうか判断したい」と話す。
関係する矢板市、塩谷町、日光市の3市町は支援策の協議を進めているが、財政が厳しい中で、結論には至っていない状態だ。
全国的に路線バスの危機が叫ばれている中、栃木県内のバス路線は民間と自治体の委託運行(いわゆるコミュニティーバスなど)を合わせて447系統あり、その大半が赤字路線。平成24年度の同県の助成金は総額1億4300万円に上っている。
http://sankei.jp.msn.com/region/news/140622/tcg14062207000001-n2.htm